応援席の気になる男(2)
東京六大学野球リーグ戦。この春の早大の試合は、何度か学生応援席に近いところで観戦した。
高校時代から気になるあの男が応援部に入部し、元気な姿を見せてくれていたからだ。
M君は、某高校で応援リーダーを務めていた。細い躯体に学生服をまとい、風になびく長めの前髪。「巨人の星」の花形満のよう。風がなくても腕を振り、体を動かすたびに、さらりさらりと揺れる。
その姿がいかにもかっこいい。元々は妻がファンだったのであるが、母校が必敗の状況でも選手を鼓舞し続ける彼に、ぼくも好感を抱くようになっていた。
高校では最上級生として応援をリードしてきた彼が、大学では下っ端としてこれまでにない一面を見せているのが何とも面白い。
早慶戦で、リーダーの一年生部員は頭の天頂部分の髪だけを残して、側面はぐるりと刈上げ。それだけでも十分に笑えるのだけれど、リーダー台にリーダーの二年、一年とチアが乗り、ダンスパフォーマンスを繰り広げたのだ。
リーダーがチアを腕で抱えあげる見せ場では、軽量のM君は逆にチアに抱えあげられていたりするわけだ。(笑)
高校時代は大人の顔をして澄まして応援していた彼も、大学ではピエロ役もやらなくてはならない。彼自身がそういう部分を面白がっているのか、嫌々やっているのかは知らないけれど、応援部員として、また人間としての幅を広げるための役に立つことを願うばかりである。
彼が4年間、応援部を続けてくれるだろうか。幹部になると、髪をオールバックにするリーダー部員が多いようだが、M君は高校時代のような髪型が似合うのではないか?
もしも主将になったら、エール交換で校歌を振る際に、前髪がなびいて実にかっこいいだろうと思うのだ。
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7月4日(土)、パシフィコ横浜で行われた「海のエジプト展」記念シンポジウムに行った。
パネリストは、フランス人海洋考古学者のフランク・ゴディオ氏、近藤二郎氏(早大教授、早大エジプト学研究所所長)、野上健紀氏(NPO法人アジア考古学研究所副理事長)、そして日比野克彦氏(アーチスト、「開国博Y150」アートプロデューサー)である。
エジプトの海の発掘調査を行うゴディオ氏を、昨年11月、日比野氏が訪ね、日比野氏は海中に潜って、海中に眠るスフィンクス像を海中に居ながらにしてスケッチしたことがある。
内容については、いずれ主催の朝日新聞社から伝えられると思うけれども、現地で日比野氏が「海中探査船はどこにある?」と聞くと、「そこだ」とホテルの目の前の海を指差された。こんなすぐ近くの海に古代の至宝が眠っていることに、大いに驚いたそうである。
また、海中でスケッチをしている際、日比野氏から水泡が上がらなくなって(つまり呼吸をしていない)、ゴディオ氏が心配したこともあったという。日比野氏はスケッチに集中して、息を止めていただけのことだったそうだ。(笑)
クレオパトラが愛した都アレクサンドリア(11キロメートル四方)が、地震か津波といったものによって、一瞬にして(おそらく数秒)で水没したらしいことも驚きであった。
このシンポジウムでぼくは最も感じ入ったのは、歴史的時間枠の“錯覚”だった。
「ギザの大ピラミッド」は紀元前2570年頃。世界三大美女の一人「クレオパトラ」(7世)が生きた時代は、紀元前数十年。その間には、2500年もの長い時間がある。
つまり、「ピラミッド→クレオパトラ」よりも、「クレオパトラ→現代」の時間のほうが短いのだ。
よくよく考えれば当たり前のことで、気がつくかどうかの問題なのだけれど、ピラミッドとクレオパトラをつい「同時代」と括ってしまう人が多い、とパネリスト(近藤氏)は語っていた。
この日は、このシンポジウムを聞かせてもらっただけで、ゴディオ氏がエジプトの海から引き上げた至宝490点の展示は見ていない。
「海のエジプト展」は9月23日まで開催しているので、いずれじっくりと見るつもりである。
(谷川彬良)


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