2007年の風景-6-斎藤佑樹
斎藤佑樹(早大一年)が大学球界にデビューした2007年。ぼくは早大の試合は、かなりの割合で観た。
東京六大学野球春秋のリーグ戦は、計25試合のうち20試合くらい。6月の全日本大学選手権は全4試合、11月の明治神宮大会も全3試合、神宮球場(1試合は東京ドーム)に足を運んだ。(まあ、全試合をご覧になった方も、かなりいらっしゃるだろうけれど)
斎藤佑樹の登板した試合も、当然たくさん観ているから、彼がいる名場面はそれこそたくさんある。
春秋リーグ戦の優勝、全日本大学選手権の優勝、明治神宮大会決勝での東洋大・大場投手との投げ合い……。
しかし、ぼくは大切な試合を一つ見逃している。春季リーグ戦の東大1回戦――そう、斎藤佑樹の記念すべきリーグ戦初登板だ。
その4月の土日、ぼくは私用でどちらか一日をとられなくてはならなかった。斎藤佑樹の初登板はぜひ観たいと思っていたので、さてどうするかなあと熟考した結果、「まさか新人に開幕戦は任せないだろう。應武監督は斎藤を2回戦に先発させるだろう」とぼくなりの結論を出したのだった。
そして、開幕日。出先のテレビには、斎藤の投げる姿が……。これには、自分の勘の悪さにがっかりしたし、同時に應武監督の英断に感心した。後になって、1ヶ月も前から開幕投手は斎藤本人に告げられていたそうなのだが……。
あれれ、話が横道に逸れてしまったので、元に戻します。
2007年の斎藤佑樹で一番印象に残っているのは、秋の六大学新人戦である。
「あれ、斎藤は新人戦には出ていないでしょ?」
そう、たしかに試合には出ていない。しかし、この日スタンドに応援に来ていた斎藤の姿が、ぼくの中ではかなり印象が強いのである。(この試合については、11月2日のブログに書いています)
寒空の下、他の野球部員たちと学生服姿でスタンドに姿を現した斎藤は、じつに楽しそうだった。同じ学年の大石ら、隣の仲間と大声でチームを応援し、とくに最終回の攻撃で早大が大逆転した際には、立ち上がって大拍手、大声援だった。
神宮球場で試合があるときは、当たり前だが彼はユニフォーム姿であり、試合に集中しているから、どこか気難しい顔をしていることが多い。
だから余計に、斎藤の柔和な表情が新鮮だったのかもしれない。
昨年、夏の高校野球・西東京大会の早実の初戦にも斎藤はスタンドに来ていたが、その時はスタンドは満員だったので、表情まではよくわからなかった。だが、新人戦では一般客はネット裏しか入れず、野球部員たちはベンチ裏のだだっ広い内野席を独占して応援していたのだ。仲間も一緒だったこともあって、自然な表情が出たのだろう。
試合の途中、スタンド下のお手洗いに行くと、トイレのすぐ外の通路で学生服をきちんと着た斎藤が、誰かと話していた。目上の人だったと見え、「はい、はい」と礼儀正しく返答していた。
ぼくは彼の横をすり抜けるようにしてトイレに入ったのだが、このことを知り合いの女性に話すと、「わざとぶつかればよかったのに」などと本当に残念そうに言う。
うーん……ぼくは男だから、そういう趣味はないのだが……。(笑)
しかし、久しぶりに間近で見る斎藤は、大きく見えたことは確かだ。学生服の胸板が厚くなったようだし、下半身もどっしりした印象がある。
新年を迎え、斎藤は今年の目標を誓ったことだろう。リーグ戦4連覇、新記録の5連覇、そして昨年は惜しいところで逃した4冠達成(リーグ戦春・秋、全日本大学選手権、明治神宮大会優勝)……。
きっと斎藤の右腕が、夢を叶えてくれるだろう。
(谷川彬良)


最近のコメント